冬の寒さについて…放射冷却とは?
はじめに
「明日の朝は放射冷却の影響で気温が下がりそうです」
このような言葉を、天気予報で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
では、放射冷却とはどのような現象なのでしょう。
実は、あらゆる物体は自身が持っている熱を電磁波(赤外線)として周囲に放射しています。熱を放射すると、その分だけ物体自身の温度は下がります。このように、熱を放射することで温度が下がる現象を放射冷却といいます。
気象の分野で使われる放射冷却とは、地面が昼間に蓄えた熱を赤外線として空へ放射し、その結果地面の温度が下がるとともに、地表付近の空気がぐっと冷やされる現象を指します。
地面の放射冷却は昼夜を問わず起こっています。昼間は太陽が出ているため、太陽から受け取る熱が地球から放射される熱を上回るので地面は暖まります。しかし夜は太陽の熱がないため、地面は冷えていく一方です。このように地面は「太陽熱で暖まること」と「熱を放射して冷えること」を毎日くり返しています。
放射冷却が強くなる条件

放射冷却が強まるのには、空の状態が大きく関係します。
2.1 雲が少ない夜
雲は夜空の布団のようなもので、地面から放射された赤外線を雲が吸収し、その一部を地面方向へ放射する働きがあります。そのため地表の冷え込みが抑えられます。ところが晴れた雲のない空はこの布団がない状態なので、熱が上へ上へと逃げ続けるため、冷え込みが強まります。冬の晴れた日の朝が特に寒いのはこのためです。
2.2 風が弱い
風は空気をかき混ぜて温度差を均す働きがあり、冷たい空気が溜まりにくくなります。無風に近い夜は冷えた空気が地面付近にどっしりと居座り、朝になるといっそう冷え込んで感じられます。
2.3 乾燥している
水蒸気は赤外線を吸収しやすい物質です。空気が乾燥していると、地面から出る赤外線を、吸収して返す役割が弱まり、熱がどんどん宇宙へ逃げていきます。冬は大気が乾き水蒸気も少なくなります。そのため熱が逃げやすく、放射冷却が強くなりやすいのです。
放射冷却が引き起こす現象

放射冷却は単なる気温低下だけでなく、様々な冬の現象につながっています。主な現象をご紹介します。
3.1 霜がおりる
地面や植物が強く冷やされ、表面温度が0℃以下になると、その周囲の空気も冷却されます。その結果、空気中の水蒸気は気体のままではいられなくなり、直接氷となって付着し、霜が形成されます。
3.2 霧(放射霧)が発生
夜の間に地面付近が急激に冷え、空気中に含まれる水蒸気が冷却されて細かな水滴へと変化します。それらの水滴が空気中に浮遊することで霧が発生し、早朝に見られる霧は放射霧である可能性が高いです。
さらに建物も外気の影響を受けるため、「部屋がいつもより冷えている」「床がひんやりしている」と感じるのも、強い放射冷却の日に起きやすい現象です。
放射冷却はなぜ冬に強く起きるのか?

夏にも放射冷却は起きていますが、冬の方がその影響が大きく現れます。それは、冬が放射冷却にとって「起こりやすい条件」がいくつも重なる季節だからです。
主な理由は次のとおりです。
4.1 日射量が少ないため、地面が暖まる時間が少ない
冬は太陽の高度が低く昼の時間も短いため、地面が受け取る熱の量が少なくなります。その結果、昼間に蓄えられる熱が少なく、夜になるとすぐに冷えやすくなります。
4.2 乾燥した季節で水蒸気量が少ない
空気中の水蒸気は、地面から放射される赤外線を吸収して、地表面に放射し返す働きがあります。冬は空気が乾燥して水蒸気が少ないため、熱が逃げやすく、放射冷却が強まりやすくなります。
4.3 夜が長く冷える時間が長い
冬は日の入りが早く、夜の時間が長くなります。その分、地面が熱を放射し続ける時間も長くなり、朝方まで冷え込みが続きます。
4.4 晴れの日が多く、雲が少ない日が続きやすい
雲は地面から逃げる熱を抑えてくれます。冬は晴天の日が多く雲が少ないため、放射冷却が強く起こります。
このように冬は、「熱をためにくく」「熱が逃げやすく」「冷える時間が長い」という条件がそろっています。そのため放射冷却が特に強く働き、冬の朝の厳しい冷え込みにつながるのです。
砂漠の夜が寒いのも

砂漠というと、とにかく暑くて乾燥しているというイメージが強いと思います。太陽の日差しが強く日中はとても気温が上がります。ところが砂漠地帯は湿度が低く、雲も発生しにくいため、夜になり砂から放射される赤外線を遮る物質がないため、砂の温度がどんどん下がり、それに伴って気温も下がっていきます。夜には氷点下にまで温度が下がることも珍しくないようです。
これも放射冷却の現象です。
おわりに
放射冷却は難しそうな言葉ですが、仕組みはとてもシンプルです。
冬の冷え込みが強い朝、車のガラスが凍っている日、部屋がいつもより冷たく感じる日。そんな時は「あ、今日は放射冷却が強かったんだな」と思っていただければ、自然の仕組みが少し身近に感じられるかもしれません。
